鹿児島県は県土の64%の59万4千haが森林で、森林面積は全国第12位の森林県です。
そのうち、45%の27万haはスギ・ヒノキを中心とする人工林です。また、74%が民有林、26%が国有林です。
森林の樹木の幹の体積(資源量の目安)を表す森林蓄積は、人工林を中心に年々増加してきており、令和3年4月現在で約1億6千万m³となっています。
森林は、様々な働きを通じて国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与しており、これらの働きは「森林の有する多面的機能」と呼ばれています。
日本学術会議答申「地球環境・人間生活にかかわる農業及び森林の多面的な機能の評価について」(平成13年)では、森林が発揮する働きは8分類35要素群で、このうち紙幣評価できる一部の機能だけでも年間70兆円の価値を発揮するとされています。
森林では、樹木の根が地中深くに伸びて土壌と岩盤を固定するため、山崩れを防ぐ効果があり、その働きは生長に伴って大きくなります。
また、下層植生や落枝・落葉が地表の浸食を抑制しており、森林からの土砂の流出量は裸地の約150分の1といわれています。
樹木が密集しすぎると太陽光が入りにくく、根が十分に育たないため本来の機能を発揮することができなくなってしまいます。
そのため、間伐を行い、適切な間隔で木を育てることが重要となります。
豊かな森林は「緑のダム」と呼ばれています。
森林の土壌は、スポンジのように小さな隙間を多く有しており、浸透性や保水性に優れています。
雨水を貯留して長時間かけて川に流出させるため、降雨時には流量のピークを低下させたり、晴天が続いても渓流の水がすぐに枯れることを防ぎます。
また、雨滴が直接地表に到達する時間と雨滴が葉や枝から幹を伝って地表に到達するまでの時間の調節をしています。
これらの機能を森林の「水源涵養機能」といいます。
森林は、地球温暖化の原因である二酸化炭素の吸収や蒸発散作用により、地球規模で自然環境を調節しています。
森林は光合成により二酸化炭素を吸収し、炭素を固定して、地球温暖化防止に重要な役割を果たしています。
日本の森林が光合成によって吸収する二酸化炭素量は年間約1億トンで、これは日本の二酸化炭素排出量の8%、国内の全自家用車の排出する量の70%に相当します。
また、近年では、化石燃料代替エネルギーとしてバイオマス発電が注目されています。
従来の化石燃料を利用した発電では、温室効果ガスが大量に大気中に排出される一方、植物を発電に利用することで、植物の生長過程で行われる光合成により吸収されるCO2の量と発電により排出されるCO2の量がプラスマイナスゼロになります。
このような炭素循環の考え方を「カーボンニュートラル」といいます。
地球上には、森林や川、海、サンゴ礁など多様な生態系が存在し、これらの生態系に支えられ、人間を含む多様な生物が共存しています。
また、人間を含む生物は、森林や淡水、雨林などから食料や水、木材などの提供を受けており、これを「生態系サービス」と呼んでいます。
生物多様性は、生態系や生物種、遺伝子の3つのレベルからなり、人間活動における地球温暖化や森林の減少、公害などにより、既知の哺乳類や鳥類、両生類の種のおよそ10~30%が絶滅の危機に瀕しています。
森林は、森林の外と比べ日射や風速が和らぎ、気温の変化が小さくなる「気候緩和」機能や、大気中に含まれる有害物質をろ過する「大気浄化」機能、風や砂の被害を防ぐ防風・防砂林としての役割、木々の高低差からなる多段階構造による防音などの「快適環境形成」機能をもっています。
また、木材としても香りによるリラックス作用や湿度が高いときは水分を吸収し、低いとき水分を放出する調湿作用など様々な効果があり、人間の生活を支えています。
森林は、柱や板などの「木材」、きのこや山菜、木の実などの「食料」、紙やセロハンテープ、粘着剤などの「工業原料」、家具や寄木細工に使用される「工芸材料」など人間の生活に欠かせない“循環型資源”として私たちの生活を支えています。また、軽さや強度、耐膨張性など様々な点で環境負荷が少ないCNF(セルロースナノファイバー)の普及が期待されています。
森林は、安らぎや癒しの効果を持つ空間であり、「フィトンチッド」と呼ばれる樹木からの揮発性物質等により健康増進効果があると言われています。
実際に都市部と森林内で「歩行」する実験では、リラックス状態を示す副交感神経活動が、森林内では都市部に比べ2倍程度まで高まるという結果1)が出ています。
また、「座って眺める」実験では、副交感神経活動が、森林内では都市部に比べ1.5倍程度高まり、代表的なストレスホルモンである唾液中のコルチゾール濃度が森林の中では都市に比べ、13%下がるという結果2)が出ています。
森林は、景観や行楽、芸術の対象として人々に感動を与え、古来よりの伝統文化を伝承するための基盤として、日本人の自然観の形成に大きく影響しています。
また、桜や紅葉など四季折々の景観を楽しめるほか、寺社仏閣などの御神木や霊木は信仰の対象となり、人々の心の支えとなっている一面もあります。